きれいな海ですね、と言うと浮かない顔をした。もとより世辞の一かけも込めたつもりはなく、べんちゃらのにおいをかぎ取って、機嫌を損ねたわけでもなさそうだ。こんな言葉が返ってきた。「そら当たり前だ。人がいないもの」
福井県の敦賀半島には、日本原子力発電敦賀原発、関西電力美浜原発、高速増殖炉もんじゅが立地している。意外に知られていないのが、海の美しさだ。原発のすぐそばには水晶浜。美浜の看板に偽りのない自然環境である
半島の付け根にあるガソリンスタンドに寄った。西へ向かえば、関電大飯原発、さらに西には、福井地裁が再稼働禁止の決定をした関電高浜原発。さすがに原発銀座として名高い若狭湾である
黄金週間というのに、スタンドにあまり来客はない。主人としばらく話し込んだ。「原発停止後、大勢の人が出て行った。この辺りは火が消えたようだ。早く再稼働してもらわないと」
原発関連産業を抱えた青森県下北半島で、鹿児島県薩摩川内市でも似た話を耳にした。こう続く。「働く場所が、ほかにほとんどないのだから」。同じ過疎県の民として、原発と共に暮らす人の気持ちは痛いほど分かる気がする
先月、老朽化した美浜1、2号機、敦賀1号機が廃止された。廃炉に伴って大量の放射性廃棄物が出る。処分地は決まっていない。
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