復活と退場と。どちらも笑顔が印象的な記者会見だった。「ハーフハーフ(半々)」の心境から現役続行を選んだ、フィギュアスケート元世界女王の浅田真央さんと、「大阪都構想」の大げんかを仕掛けて敗れた、橋下徹大阪市長と

 同じ人気者でも愛され方は随分違う。どちらの道に進もうと、浅田さんは温かい拍手に包まれただろう。少々大げさに言えば国民全員が味方だ。対して橋下さんは?

 政治の要諦は利害の調整にある。橋下さんの場合は、ことさら挑発的な言葉で対抗勢力を攻撃して注目を集め、包囲網を突破する能力にたけていた。人気はあるが、反発も大きかった

 「僕みたいな政治家が長くやるのは世の中にとって害悪です」。弊害を知った上での演技でもあったのだろう。いわゆる「劇場型」は、一段低い政治手法のように扱われるが、観客の目も肥えてきている。都構想への賛否が接近した大阪の住民投票結果は、その表れといえないか

 一度幕は下りたものの「改革」が不要になったわけではない。大部屋俳優がほとんどの政界である。もっときちんとした芝居が見たい、と観客から復帰を求める声が起きる可能性はあろう。当代随一の役者だ。実はそこまで読み込んでいるかもしれない

 「政治家引退」は相当な覚悟とお見受けする。「でも、しかし」。そうも思う。