古今東西の偉人には、似た逸話があるもので。雪舟は室町時代の禅僧で水墨画家、寺の修行をさぼってしかられて、流した涙を足の指で、描いたネズミの出来栄えで、周りを仰天させたとか
盆にこぼれたミルクを指につけ、才能を見せつけたのが、英国を代表する芸術家ターナーだ。美術史家アンソニー・ベイリーさんによると、父親は理髪店の店主。10歳に満たない子どもの作品を、洗濯ばさみで店につり下げた。誇らしげに
息子が自慢で自慢で仕方なかったのだろう。逆に絵などで生活できるかと反対していたら、モード史に残る理髪師が誕生していたのかも
「ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号」は、1688年の名誉革命の際、オランダから出帆した、後に英国王になるオレンジ公ウィリアムの艦隊を描いた歴史画。海と船、空に雲、と画家の魅力がぎっしり詰まっている
手前の赤いブイは、展覧会で発表する直前、隣の絵に負けず目立つよう、慌てて描き入れたそうだ。背は低く、ずんぐりとして赤ら顔。そんなことが繰り返しあった人らしい
ターナーを過ぎればバルビゾン派から印象派へ。徳島県立近代美術館の「美の饗宴(きょうえん)」展。ケーキの匂いのマリー・アントワネットに、格好良すぎのナポレオンも。バロック以降の西洋絵画、なるほどの展開である。