天使の背中に生えている翼は、人類の空への憧れの象徴だろうか。先人たちの数え切れない試みがあり、ライト兄弟が初めて動力飛行に成功したのは、ようやく1903年
 
 振り返れば110年とちょっと。空の道は手に入ったものの、天使ほど自由に、というわけにはいまだいかない。飛び立つときと舞い降りるときは、特に不自由だ

 「クリティカル・イレブン・ミニッツ(危険な11分)」と呼ぶらしい。航空機事故のおよそ8割が離陸の3分、着陸の8分に集中しているといわれる

 広島空港でのアシアナ航空機の着陸失敗は4月のこと。徳島空港でも着陸しようとした日航機が、滑走路を走る作業車に気付いて再上昇する重大トラブルがあった。いずれも人のミスが原因とみられている

 それからわずか2カ月後の那覇空港の事態である。自衛隊のヘリと民間旅客機2機、計3機が絡んだ大事故になりかねなかった。発端はヘリのパイロットの誤認のようだが、トラブルの再発防止へ、とことん「なぜ」を究明していただきたい

 もとより利用者の多い有数の過密空港である。同居する自衛隊の緊急発進回数も、各地の部隊の中でずばぬけている。ただ、それは理由にはなるまい。事故につながるミスをなくす仕組みをつくること。それが翼を持たない人間の、大空に対する礼儀だろう。