家畜飼いの少年と少女の恋を描いたギリシャの古典小説「ダフニスとクロエ」に想を得て、作家三島由紀夫は「潮騒」を書き下ろした。舞台は伊勢湾口に浮かぶ歌島で、神島がモデル。漁師の新治と海女の初江の初々しい恋が、爽やかな読後感を醸し出す
風光明(めい)媚(び)な伊勢志摩地方には伊勢神宮があり、古くからお伊勢参りの人たちを集めてきた。日本人の心のよりどころの一つである
来年の主要国首脳会議(サミット)の開催地が三重県志摩市に決まった。「伊勢志摩サミット」の主会場は、英虞(あご)湾に浮かぶ賢島になる見通しだ
安倍晋三首相は選定に関して「日本の美しい自然、豊かな文化、伝統を世界のリーダーたちに肌で感じてもらえる」と説明。「日本の精神性に触れていただくには大変良い場所だ」とも語った。欧米の首脳らは神宮の厳粛な空気をどう感じるだろうか
英虞湾は、御木本幸吉氏による真珠養殖の発祥地として知られる。「世界中の女性の首を真珠でしめてごらんにいれます」との言葉通り、御木本氏の真珠は世界を魅了している
日本人は欧米の文化を取り入れ、時には換骨奪胎して新たな命を吹き込んできた。脈々と受け継がれてきた日本精神や、世界に先駆けた日本人の偉業を首脳らの心に刻んでもらい、あらぬ誤解のもとを断ちたい。サミットの成功を祈る。