九州の大雨のニュースをテレビで見ていて気がついた。時間雨量を聞いても、さほど驚かなくなった自分がいる。これはまずいな、とわれながら思う

 気象庁によると、1時間に50ミリ以上80ミリ未満の「非常に激しい雨」と80ミリを超す「猛烈な雨」の年間発生回数はこの40年間、明らかに増加傾向にある。だからの「慣れ」か。その分、土砂災害や洪水の危険性も増しているのに
 
 慣れは怖い。何が異常か、判断を狂わせてしまう。危機を目前にしても、まだ大丈夫と思い込む「正常性バイアス」が働けば、避難の遅れにつながりかねない。そんな心の隙に、目ざとく付け入るのが災害である
 
 大雨に限らない。鹿児島県口永良部島の火山もまだ鎮まらないうちに、今度は群馬、長野両県の浅間山に噴火警報が出た。無論、南海トラフ巨大地震も、この先必ず牙をむく。天も地も、鳴動やまない日本列島、その上に暮らしていることを忘れてはなるまい
 
 「掠雨」という語があるそうだ。天気キャスターで知られた倉嶋厚さんらが編んだ「雨のことば辞典」(講談社学術文庫)には激しく降り注ぐ雨とある。「掠」はむち打つ、奪う。地をたたく雨、財物、命をもかすめとる雨
 
 大雨シーズンは始まったばかり。県南部の大規模浸水被害は昨年のこと。災害と無縁な土地はない。憂いなきよう備えを。