出来事に潜む「今」を見つけるのが、新聞記者の仕事の一つである。でも、目に入るのは「いつか」の光景ばかり。大した目利きでもない小欄だから? いや、そのせいだけでもなさそうだ

 車と酒、暴走。最悪の組み合わせが、北海道砂川市で家族4人を死に追いやった。被害者の1人、16歳の高校生は車に1・5キロも引きずられ、死んだ。その痛み、悔しさを思う

 「飲酒運転がばれるのが怖かった」。26歳の容疑者の身勝手な言い訳も含めてこの事故、既視感がある。同じく逮捕された27歳の運転者らと、直前まで居酒屋にいたという。飲酒運転の危険性が声高に叫ばれるようになって随分たつ。厳罰化も進んだ。にもかかわらず愚か者は絶えない

 金、そして男と女。こう並べると、こちらも動機においては古典的だ。青酸化合物を使った連続殺人事件で、68歳の容疑者が再逮捕された。逮捕は3回目になる

 4千万円超の借金の返済を免れたい。これまた身勝手な理由で「カプセルに入れた青酸を飲ませた」。命は金で買えないのが通り相場だが、容疑者にとって、命は金のなる木でしかなかった

 取り返しのつかないことがある。酒よ、金よ、その毒気で一体どれだけの命を奪い続けるつもりか。そう呼び掛けて返答を待つ。遠くの方から声がした。「それは、お前さん方次第だね」。