確かに善人ばかりの世の中ではない。それでも、生まれ落ちたときからの人種差別主義者がどこにいるだろう。まだ21年の人生。黒人教会で引き金に指を掛けるまで、容疑者はどこをどう歩いてきたのか

 米南部サウスカロライナ州の人気観光地チャールストンで起きた銃乱射事件。再びの憎悪犯罪、ヘイトクライムである。聖書勉強会に集まった9人の命を奪った

 <南部の木には奇妙な果実が実る>。事件を伝える映像は現代の風景であっても、底に流れているのはSPレコードのざらりとした響き。リンチを受けてつるされた黒人の死体を「奇妙な果実」と呼んだ、ビリー・ホリデイの切ない歌声

 今でこそ声高に人権を語る米国は、つい半世紀ほど前まで、レストランもバスの席もトイレも、肌の色で分ける、あからさまな人種差別の国だった。影響は今も続いている。自由の国が逃れようとして、いまだ逃れられない病と言っていい

 「憎悪はいけない。許さねばならない」。多くの遺族がそう語った。ただ、神でもない人が、簡単に納得できるはずはあるまい。激しい葛藤と闘っている最中と想像する

 銃社会が事態をエスカレートさせている。身を引き裂かれるような遺族の思いに、任期少ないオバマ大統領が応える道は一つ。銃規制の強化を掛け声だけで終わらせないことである。