志村喬さん扮する市役所課長・渡辺さんは、死期が近いことを知ってがくぜんとする。漫然と過ごしてきた自分の人生は一体何だったんだ、と。1952年の作品「生きる」は黒沢明監督の代表作の一つだ
戦前の流行歌「ゴンドラの唄」が効果的に使われている。最初は盛り場で絶望感とともに。次は残された月日、お役所仕事に抗し、全てを注ぎ込んだ児童公園のブランコに腰掛けて。渡辺さんは口ずさむ。<命短し 恋せよ乙女…>
恋こそ人生とまで言わない。ただ、遠い過去の一時期、頭の多くをそれが占めた筆者からすれば、「少子化社会対策白書」の記述は信じ難い。未婚で恋人のいない20歳代と30歳代男女の4割近くが、「恋人が欲しくない」のだそうだ
理由も聞いている。最多は「恋愛が面倒だから」。続いて「自分の趣味、仕事や勉強に力を入れたい」。それでいいのなら、いいけれど…。言葉が続かない
恋だ愛だ、というと若干頬も赤らむものの、少子化対策上問題には違いない。だが、恋は社会の要請を受けてするものでもないだろう。「出会いの場がない」だって? 婚活イベントも随分あるとは思うが、まだ不足?
渡辺さんは、空虚な心を恋で満たしたわけではない。それでもやはり、悪いことは言わない。恋せよ、女子、男子。<熱き血潮の 冷えぬ間に>。
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