東京の神宮外苑一帯には、イチョウ並木や聖徳記念絵画館、神宮球場があり、しゃれた景観と文化、スポーツを併せて楽しめる。その一角を占める国立競技場から見る空は広かった。気晴らしにトラックを走れば、競技場の空は、時に雄弁にその歴史を語るのだった
 
 1964年の東京五輪の開会式の日、東京は平和の祭典を祝うかのような晴天に恵まれた。自衛隊のジェット機が五輪のマークを描いた青空を見て、わずか20年ほど前の雨空を思い出した人もいただろう
 
 前身の明治神宮外苑競技場は太平洋戦争中の43年10月、出陣学徒壮行会の会場となった。戦地に赴く2万5千人の学徒が行進し、多くの女子学生らが見送った。天が泣いていると思えるような冷たい雨に打たれながら
 
 平和は尊い。外苑競技場は40年の東京五輪の会場候補地だった。もし戦争で五輪が中止にならなければ、世界の若者が東京に集い、スポーツの名勝負を展開していたはずだ
 
 戦後、58年に完成した国立競技場が、平和な時代に役目を全うできたのは幸いだった。2020年の東京五輪のメーン会場は新国立競技場。2本の巨大なアーチ構造の是非や工費などが論議を呼んだが、政府は10月着工の方針を固めた。後世、新競技場が語る歴史は、スポーツやコンサートなど、戦争とは無縁のものであってほしい。