何を食べても思い浮かぶのは子どものこと。<瓜(うり)食(は)めば子ども思ほゆ栗(くり)食めばまして偲(しの)はゆ>。わが子は宝物。万葉の時代から、親子の情は切っても切れない。当時交流があった半島の人々も、山上憶良の絶唱に、容易に共感できたはずである
 
 だが、現代の面々には、まるで分からないとみえる。北朝鮮が日本人拉致問題などの再調査結果の報告を延期した。調査委員会が設置されて1年。きのうが期限だった
 
 誠意さえあれば、時間は十分にあったろう。報告の見返りに制裁解除や人道支援を引き出すのは難しい。ならば、先延ばしして日本政府の出方をみよう。こんな算段らしい
 
 13歳で拉致された横田めぐみさんの父滋さんは82歳、母早紀江さんは79歳。家族も高齢になり、時間はふんだんに残されているわけではない。不法に奪われた子の帰りを、一日千秋の思いで待ちわびるその気持ちを、なぜにやすやすと踏みにじるのか
 
 夢に浮かぶのは両親、兄弟姉妹、友人、郷土の山河。もし、夢と分かっていたならば、眠り続けていたのに…。海の向こうには、きょうの朝、そんな思いで目覚めた拉致被害者もいるのではないか
 
 独裁は情の対極にある。それでも、未帰国の拉致被害者12人、「拉致の疑いが排除できない」行方不明者878人。政府は救出の突破口を開かなければならない。