「勝負は時の運」。達観したふうに言ってみたところで、残念な気持ちは消えそうにない。むしろ、勝った米国を褒めるべきだろう。サッカーの女子ワールドカップ(W杯)カナダ大会決勝。振り返れば、前半の10数分までがクライマックスのような劇的な試合だった

 「戦いは最後の5分間にある」とは、かつてのフランス皇帝ナポレオンの言葉だが、どんな名将なら疾風怒濤(しっぷうどとう)の米国の猛攻をしのぎ、挽回できただろうか

 ロイド選手の3点目の超ロングシュートは、前に出ていたGK海堀選手の頭上を越えてゴールへ。勝敗の行方を高らかに告げるような狙い澄ました一発だった

 連覇を目指したなでしこジャパンは劣勢。それでも試合が面白かったのは、双方の選手にゴールへの意欲がみなぎっていたからだ

 試合後、緑の芝に光と影が交錯した。大舞台で日本に雪辱を果たし、抱き合って喜びを分かち合う米国。涙顔で抱擁する日本チーム。4年前と立場は逆転したが、今度は、なでしこが雪辱を期す番だ

 最後のW杯となった澤選手は「出し切った」と言った。「いいチームだったなって思える」と涙の岩渕選手。準決勝までの6試合は全て1点差。途中交代の選手も活躍し、総力で勝ち切ったのは立派だ。悔やむことはない、なでしこ。「いいチームだった」と私たちも思っている。