壮麗なパルテノン神殿があるアクロポリスの丘からアテネの町を見下ろせば、古代ギリシャの栄華がしのばれる
 
 ユーロが流通する前の2001年まで、ギリシャでは固有の通貨ドラクマが主役だった。今、ドラクマの復活が取り沙汰されている。欧州連合(EU)が求めるギリシャ財政の再建策を問う国民投票で、ノーを突き付けたためだ。今後の交渉次第では、ギリシャがユーロ圏を離脱する可能性もある
 
 ところが、ギリシャにはドラクマを刷る印刷機がないのだそうだ。前財務相は「印刷機を壊した」と述べた。ユーロ導入に当たって、強い決意を示すためだったという。皮肉なことだが、かえってよかっただろう
 
 ドラクマは紀元前の古代ギリシャでも使われた通貨単位で、近代になって復活した。もう一度、ドラクマ復活では懐古趣味が過ぎる
 
 ギリシャ国民に必要なのは、過去よりも未来を見据えることだ。国の財政再建を後押しするような先端産業が、なぜ、ギリシャから生まれないのか、真剣に考える必要がある
 
 ユーロ離脱は、世界に混乱と災厄をもたらすパンドラの箱になる恐れもある。そんなギリシャ神話は21世紀に、お呼びでない。世はインターネット時代。元手は少なくても、サイバー空間なら、利益の種をまいて、新たな成長神話を誕生させることもできるはずだ。