高揚感なき、冷めた信任である。

 徳島県知事選は、無所属現職の飯泉嘉門氏が、無所属新人で元県議の岸本泰治氏、共産党新人で元小松島市議の天羽篤氏を破り、県政史上初の5選を果たした。

 多選の是非が争点となる中、飯泉氏は人口減少や防災への対応の必要性を説き、続投を訴えた。その勝利は、県政を4期16年担った手腕が一定の評価を受けた結果だ。

 課題が山積する中、県政を停滞させるいとまはないことから、大きな変化よりも、飯泉県政の継続による安定を求めたと言える。

 ただ、多選への懸念を払拭できたわけではない。

 34年ぶりの「保守分裂選挙」とはいえ、支援態勢を見れば、飯泉氏は圧勝してもおかしくなかった。

 自民党の国会議員や県議、首長のほとんどから支援を受ける飯泉氏に対し、自民党で岸本氏の後ろ盾となったのは後藤田正純衆院議員のみ。飯泉氏の推薦団体は130を超えたが、岸本氏は自身が代表の県空手道連盟だけだった。

 多選を批判し「県庁改革」を唱えた岸本氏が3万6千票差に迫ったのは、長期に及ぶ飯泉県政への不信の表れだ。

 それは選挙期間中に行った徳島新聞社の世論調査からも見て取れる。

 多選について「弊害の方が大きい」との回答が50・1%を占め、「行政経験を積むのは良い」の34・3%を上回った。また、多選の弊害の例として挙げられる「とくしま記念オーケストラ問題」に関しては、「説明責任を果たしている」は14・8%にとどまり、「そうは思わない」が62・2%に上った。

 不満はあるが、飯泉氏に託すしかない。そんな消極的な選択だったことを、投票結果は示している。

 飯泉氏は最長不倒の5期目に入る。最大の課題は、人口減少などによる県勢衰退に歯止めを掛けることだ。

 4期目は「地方創生」を最重要課題に据え、多額の予算をつぎ込んだ。しかし、人口減少はむしろ加速傾向にある。県内の宿泊者数は4年連続の全国最下位。公約だった「保育所待機児童数ゼロ」「海部道路の事業着手」などは達成できなかった。

 「地方創生の旗手」「課題解決先進県」「誇りと豊かさを実感できる徳島づくり」と、言葉ばかりが先行していることに、県民は違和感を抱いている。飯泉氏への期待は失われつつあるようだ。

 それを象徴する場面があった。3月31日の日曜日、徳島駅前で行われた飯泉氏の街頭演説に集まったのは、県の幹部やOB、推薦団体の関係者ら20人ほど。飯泉氏の訴えを聞こうと足を止める通行人はほとんどいなかった。

 飯泉氏は「原点に返り、反省すべきは反省する」と再々口にしてきた。その言葉通り、独善に陥らないよう、批判を真摯に受け止め、謙虚な姿勢で県政に臨んでほしい。