ローマ神話に登場する「プルート(冥府の王)」に、その名が由来する冥王星。おどろおどろしい相貌を思い浮かべていたら、白いハートで飾られ、むしろ愛らしさたっぷりの表情だった

 太陽系の最果てにある星に、米航空宇宙局の無人探査機が9年半かけて接近し、初めて間近から観測した。画像では、ハート形の地形は直径の半分ほど。うつむき加減で、近寄るカメラに、はにかむ少女のように見える。クレーターなどの隕石(いんせき)衝突の痕跡は、頬に輝くえくぼか

 冥王星の大きさは直径2370キロで、およそ月の3分の2。地球から48億キロかなたにあり、1930年、米国の天文学者に発見された。太陽の周りの楕円(だえん)軌道を248年かけて一周する

 長らく9番目の太陽系惑星とされてきたが、2006年の国際天文学連合総会で準惑星に格下げになった。冥王星周辺で、より大きい天体が見つかり、惑星の定義を見直したためである

 降格の処遇に、企業の出世競争を重ね合わせていた人もいただろう。星の様子を中高年男性風にイメージしていた人には、かれんな姿は意外だったかもしれない

 冥王星はハッブル宇宙望遠鏡でもぼんやりとしか撮影できず、簡単な天体望遠鏡では見えにくいそうだ。でも、私たちには想像力という翼がある。夜空を見上げて、少女の笑顔に思いをはせたい。