1票には、実に多様な意味が込められる。実績への評価や人柄、応援したい公約の存在。批判票もある。

 徳島県知事選は、3万6千票差で現職の飯泉嘉門氏が新人の元県議岸本泰治氏を抑えた。飯泉氏サイドにとって、当初の予想以上に岸本氏の得票を許す中での勝利だったに違いない。

 この民意が示すものとは―。

 強引だが、多様な思いをひとくくりにすると、「5期20年という長期の県政には問題もあるが、難問を山ほど抱える徳島のかじ取り役を今は変えるべきではない」、あるいは「4期16年の飯泉県政を否定するわけではないが、満足もしていない」といった感じだろうか。

 当然、有権者からの警鐘も含まれている。公金の使い方、行政の在り方が問われた「とくしま記念オーケストラ」事業は、多選や県議会のオール与党体制を背景にした慢心の産物とも言える。対立候補は、この問題に、全国最下位の宿泊者数などの課題が複数残る徳島の現状を加え、「多選の弊害」「成果が出ていない」などと批判を展開した。こうした訴えに応じた有権者も少なくないはずだ。

 人口減少、少子高齢化が加速する今、地域の未来が不安視されている。働く場や給与、子育て、医療、教育の水準は将来にわたり保たれるのか。若い世代にとって、これらが地域で暮らす上での重要な要素となる。徳島県の最優先課題だ。

 飯泉氏は、今回の選挙結果について「批判票を投じた皆さんにもしっかりとお応えできるよう5期目を迎えたい」と語った。言葉通り、少数の意見も含め、示された民意を丁寧にくみ上げる県政運営が求められる。

 私たち有権者の役割も、まだ終わっていない。飯泉氏の5期目の県政運営に目を凝らす必要がある。むしろ、これからが本番だ。