頭の回転が速い「分かったの角さん」は「日本列島改造論」を片手に公共事業を推し進めた。「コンピューター付きブルドーザー」の異名を取った田中角栄元首相が、共同通信社の全国世論調査で、戦後日本を代表する人物の第1位となった。2位の吉田茂元首相に大差をつけて

 徳島県選出の三木武夫元首相は政敵。三木政権下で、ロッキード事件に絡んで逮捕され、刑事被告人となった後も、自民党最大派閥の田中派を率いて政界に君臨した。「キングメーカー」「目白の闇将軍」の呼び名にこもる一種の畏怖の念が、角さんのすごみを物語る

 最大の功績は、首相に就任して間もなく、日中国交正常化を成し遂げたことだ。総裁選で親台湾派の福田赳夫元首相を破った勢いに乗り、「エイヤッ」の度胸と実行力で北京に飛んだ

 世論調査で驚いたのは「将来、日本を巻き込んだ大きな戦争が起きる可能性があると思うか」の問いに、60%が「ある」と回答したこと。国民の危機感は強い

 大平正芳、中曽根康弘両元首相を加えた「三角大福中」の時代は党内で外交路線などが違う勢力が均衡し、「平和国家」の理念も保たれた。もちろん、派閥抗争が目に余った当時を古きよき時代と言うつもりはない。だが、識見、度量、判断力に優れた大粒の政治家が今、妙に懐かしいのはなぜだろう。