重厚な外観だけでなく、美しい内装もできる限り残してほしい。掛け替えのないものだから。歴史的な建造物として知られる大阪・大丸心斎橋店の本館建て替え工事が来年から始まる

 本館は大正末期から昭和初期にかけて建てられ、外壁は御影石と茶褐色のタイルのコントラストが美しい。西側の御堂筋から眺めると、ゴシック風の外観と、長年の風雪を経て黒っぽくくすんだタイルが調和し、何とも言えない趣がある

 内装はアールデコといわれる様式で、さらに見応えがある。1階の高い天井や柱、エレベーターの周辺などには、直線が多用された細かな幾何学模様のデザインがあふれる。ステンドグラスやレリーフも配されて華やかだ

 本館は、近代建築に関する国際組織「DOCOMOMO(ドコモモ)」日本支部が選定した日本の重要な建築作品100選の一つでもある。100選には国立代々木競技場や国立西洋美術館など、年月を経て輝きを増す名作が並ぶ

 しかし、歴史ある建物は、耐震化やメンテナンス費用、利用効率などの問題を抱えている。所有者にとっては新築する方が安上がりなのか、中には取り壊されてしまったものも。経済性を理由にした建て替えは、やむを得ないのだろうか

 100選は追加されて現在184件。徳島からは唯一、鳴門市庁舎が選ばれている。