願わくば恋人探しも、もう少し静かにやってもらいたいものである。<あつ苦し昼寝の夢に蝉の声>夏目漱石。いいえ、早朝からです。ジーとかシャーとかいう叫びが耳底に注ぎ込まれるのは
 
 長ければ地中で17年、比べて短い地上の日々。寛容に、とは思えども一度気になれば耳に付く。恋に鳴くのは猫と同様、雄ばかりだそうだ。鳴かぬ蛍が身を焦がす、そんな恋もあるのだよ、と教えてやりたいが聞く耳は持つまい。思いの丈を存分に吐き出してもらうほかない
 
 夏休み中の子どもたちには、こんな小言は似合わない。冷房の効いた部屋で携帯をいじるより、夏の光を、蝉時雨を全身で引き受け、山を駆け海に遊ぶ楽しさを今、しっかり味わってほしい。<身に貯へん全山の蝉の声>西東三鬼
 
 ただし、暑い日が続いている。熱中症には十分注意して。帽子を忘れず、水分・塩分を小まめにとって。無理は禁物だ。<蝉の音も煮ゆるがごとき真昼かな>高桑闌更
 
 第4次厚木基地騒音訴訟で、自衛隊機の飛行差し止めを命じた東京高裁は、より被害が深刻とされる米軍機については訴えを退けた。現行の安保体制下では、静かにさせる権限が日本にはないらしい
 
 よほどましか、蝉。狂騒の中に生きとし生けるものの哀感を聞き取った俳人も。<やがて死ぬけしきは見えず蝉の声>松尾芭蕉。