太平洋戦争の終結を国民に告げた昭和天皇の声は、すっきりと明瞭だった。ラジオ放送でなじみ深い「玉音放送」の原盤レコードの音声がきのう、初めて公開された
 
 これまでテレビ番組などで使われていた玉音放送は複製で、声はやや低く、スピードも遅かった。聞き比べると、原盤の声は張り詰めた響きがあり、昭和天皇の肉声に近いようだ
 
 実際の放送は、「堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ」など言葉遣いが難解なことに加え、ノイズが多いこともあって、理解できた人は少なかったらしい
 
 しかし、国民の価値観は1945年8月15日の放送を境に百八十度転換した。「国のために」を合言葉にした抑圧的な社会から、「自由になれる」解放感を多くの人にもたらし、戦後の歩みが始まった
 
 当時、放送を聞いた漫才師の京唄子さんは「自分のやりたいことをやろうと強く思いました。私は芸がしたかった」と、かつて取材に答えている。徳島県内の戦争経験者も「もう空襲も機銃掃射で狙われることもない」と心の高鳴りを感じたという
 
 戦後70年。玉音放送をじかに聞いて、覚えている人は少なくなった。今回の公開を機に、戦争を経験していない世代は、原盤を聞き、詔書をあらためて読んでほしい。日本の平和と繁栄の原点を再確認することで、現在の政治の行く末を考えたい。