「かわうち」ではなくて「せんだい」と読む。子どものころ愛読した軍艦図鑑で知った。「川内」は旧日本海軍の軽巡洋艦。外観は独特で、北大西洋に沈んだタイタニック号のごとく、煙突が4本並ぶ

 完成したのは大正時代。ミッドウェーなど幾多の作戦に従事し1943年11月、ニューギニアの東方、ブーゲンビル島沖海戦で撃沈された。戦死者は334人

 鹿児島県薩摩川内市、艦名の由来となった川内川の河口にあるのが川内原発だ。九州電力がきょう、1号機の原子炉を再稼働させる。新規制基準に適合した原発としては全国で初めてとなる

 半径30キロ圏内に20万人以上が暮らしている。万一の場合の避難計画は十分なのかと以前、この欄でも指摘した。核のごみ、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の用地確保にもめどが立っていない。見切り発車の印象を受ける

 「国が先頭に立って原子力災害への迅速な対応や被災者への支援を行う」と政府は言い切る。それでも、収束には程遠い東京電力福島第1原発事故の現状を見れば、被災者の嘆息を聞けば、額面通りに受け取るのは難しい

 多くの課題を積み残したまま再稼働へと突き進む原子力政策に、作戦のための作戦を続けて敗北を重ねた、かつてのこの国の姿が浮かぶ。杞(き)憂(ゆう)だよ、と笑う人もおられようが、心配の種は尽きない。