自らは「オレオレ」としか名乗らず、電話口の相手に思い浮かんだ名前を言わせて引き込むのが、オレオレ詐欺の端緒だと思っていた。ところが先日、小欄の親にかかってきた電話は、息子の名前を正確に名乗ったというので驚いた

 親には、しばらく電話をかけていない。何しろ同居しており、毎日のように顔を合わせるので、その必要はほとんどない

 偽息子に対し、親がいぶかしがりながら応対していると、電話は突然切れた。もし、同居しておらず、互いの様子をあまり知らなければどうなったことか…

 息子の名前をどうやって知ったのか。氏名や住所、電話番号などを記した同窓会や各種会員名簿などはたくさん出回っている。それらを悪用したのだろう、許し難い行為だ

 特殊詐欺の今年上半期の被害は、全国で236億円、徳島でも1億円を超える。突然電話をかけてきて、うそを並べ立てながらお金を無心するが、その手口は巧妙化している。現金を受け取る方法は、今や首都圏に呼び出す「上京型」が多いという。口車に乗らないためには、親と子が互いの状況をよく知っておくことが大切だ

 お盆を迎えて息子や娘が帰省し、だんらんのひとときを楽しむ家庭も多いだろう。土産話を聞いて、近況を伝える何げない会話を大切にしたい。偽物の家族にだまされないために。