ゴール後、さわやかな笑顔が、全力を尽くした後の充実感を物語っていた。背中に羽織った日の丸が誇らしげに揺れる。7位入賞でつかみ取ったのは念願のリオデジャネイロ五輪代表の座だ
 
 おめでとう、伊藤舞選手。過酷な夏の女子マラソンはアフリカ勢の圧勝に終わったが、トップと約2分差は大健闘といえる。途中、先頭集団を引っぱる日本勢の一人として世界に果敢な走りを披露しながら、最後まで耐え抜く粘りを見せたことも特筆したい
 
 「自分の力を精いっぱい発揮する目標を達成でき、オリンピックにつながった」。その感想を聞き、日ごろの精進が報われたのだと感じた。リオ五輪でも持てる力を存分に発揮してほしい
 
 五輪には独特の雰囲気がある。メキシコ五輪のマラソンで銀メダルに輝いた君原健二さんはつらい経験をした。レース後半に、君原さんは便意に襲われ腹痛と闘いながら走り続けた。それを自分のミスだと責め、「手放しで人さまに自慢できるレースではなかった」と振り返る。あの君原さんでも調整が思うに任せないのが五輪マラソンだ
 
 それだけに、早く五輪代表に内定し、本番までの練習、調整がしやすくなった効果は計り知れない。リオでも日の丸を羽織り、今度はウイニングランを。先輩たちの経験を糧に徳島から羽ばたき、世界の「ITO」に。