<さぎをからすと/いふたがむりか>。渦中のデザイナー氏には気の毒だが、そんな端唄が口をついて出た。白紙撤回となった新国立競技場計画に続いての仕切り直し。2020年東京五輪。何とも無粋な祭り準備である
 
 公式エンブレムは、競技場とともに大会のシンボルとなる。世界に発信する日本の顔でもある。最低限、国民の間に何のわだかまりもないことが条件となろう
 
 もとより、デザイナー氏の釈明にうなずく人は少なかった。<鷺を烏>とまでは言い過ぎだろうが、盗用ではなくとも、国境を超えた騒ぎとなった、くだんの作品を使い続ける意味はあるか。異例の取り下げも致し方あるまい
 
 大会のイメージダウンは避けられない。これを奇貨として、日の丸にも似た、前回1964年東京五輪の力強さと美しさを超えるシンボルの誕生を願う
 
 厄介なことに、幻となったエンブレムは既にテレビCMでも流れている。取り下げによる金銭的な損失も、相当な額に上るのだろう。大会組織委員会は、騒動の責任まで幻にしてはいけない
 
 それにしても感心するのが、STAP細胞問題でも存在感を見せつけたネット探偵の底力である。今回も”元ネタ”を引っ張ってくるわくるわ。身ぐるみはがす、その矛先が今度はどこに向かうか。エンブレムの一件にネット時代の怖さも思う。