言葉に罪はないけれど、「時局」という文字を目にすれば、少し身構えてしまう。それに続くのが、今は「講演会」ぐらいなのが幸い。「鑑みる」とか「逼(ひっ)迫(ぱく)する」ような時代は、二度と来てほしくない
 
 落語家が東京・本法寺に「はなし塚」を建立したのは1941年のことだ。「時局にふさわしくない」と53の演目を封印した。「明(あけ)烏(がらす)」や「居残り佐平次」「子別れ」といった名作の数々をである
 
 落語に真面目も不真面目もあったものではないと思うが、時の体制や空気がそれを許さなかったのだろう。全体主義や国粋主義は笑いを嫌う。そんなところがある
 
 中国当局が各衛星テレビ局に5日まで、全ての娯楽番組の放映を見合わせるよう通知した。それこそ「時局にふさわしくない」か。代わりに戦争をテーマにした作品を流すように、と。きょう、北京で「抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利70周年」記念行事が開かれる
 
 3日を抗日戦争勝利記念日に定めたのは昨年。経済発展に陰りが見られる中、「抗日」で愛国心をあおり、求心力を高める狙いがあるといわれる
 
 天安門の城楼で、軍事パレードを閲兵する習近平国家主席の姿を想像すると疑問が湧く。「ファシズム」に勝利したのは、少なくとも連合国の認識では「民主主義」のはず。ならば記念行事の看板に誤りはないか。