その昔、イスラエル王国に「ソロモンの栄華」とうたわれる時代があった。繁栄を築いたソロモン王は動物とも語り合うことができた。魔法の指輪をはめていた、という言い伝えがある
 
 そんなこと私にも、魔法なんかの助けを借りなくてもできる、と動物行動学を確立したローレンツ博士は言う。生まれてすぐの動物が、近くで目にした動く物体を親とみなして追従する「刷り込み」現象を最初に発表した学者だ
 
 <自然界においては、実在する唯一の魔法使いである詩人たちがいかに美しい物語を生みだそうとも、真実はそれらよりはるかに美しいものなのである>(「ソロモンの指環」早川書房)。ノーベル賞も受賞した動物学の泰斗には、多様な調べが聞こえていたのだろう
 
 比べて人間界の真実は、美しいとは限らないようだ。例えば、安倍晋三首相の前に沈黙する自民党である。400人もの国会議員がいながら、無投票で総裁再選が決まった
 
 立候補を模索したのが、野田聖子前総務会長だけとは。安保法案の審議中とはいえ、ポスト安倍を狙う他の面々に立ち上がる気概はなかったか。勝てない戦だとしても
 
 魔法の指輪をはめて本音を探ったところで、聞こえてくるのは損得の話ばかりかもしれない。その昔、党の強みだった多様性はどこへ行った。1強に追従する面々に思う。