安倍晋三首相の祖父の岸信介元首相は、日米安保条約改定に政治生命を懸けた。デモの群衆が国会周辺に押し寄せる中、首相官邸で実弟の佐藤栄作氏と2人になった時に、「兄貴、一緒に死のう」と言われたと伝えられる
 
 後に首相になった佐藤氏は、沖縄を訪れて「私は沖縄の祖国復帰が実現しない限り、わが国にとって戦後は終わっていないことはよく承知している」と演説。沖縄の本土復帰を実現させ、長期政権に幕を引いた
 
 その是非は別にして、政治家それぞれに信念がある。安倍首相の師匠筋の小泉純一郎元首相は悲願の郵政民営化に反対する自民党の有力政治家を、衆院を解散して切り捨てた
 
 安倍首相は集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案の成立に執念を燃やす。国民の約6割が反対してもびくともしないのが不思議だ。国会周辺の主婦らの怒りの声は官邸に届いても、首相の耳には聞こえないのだろうか。草の根の民衆の叫びである
 
 与党は次世代の党など野党3党の賛成を得て、法案成立へと突き進む。一方、国会の外に出て反対を訴えてきた民主党の岡田克也代表ら、反対を貫く野党は徹底抗戦
 
 眠れない夜、つかの間の夢を見たなら、日本の未来に何が待っていただろう。日米同盟強化による国の安定か、それとも紛争やテロの巻き添えによる国民の死か。