「キスをしたら、アレルギー反応が大幅に抑えられるんだって」。答えに詰まってはいけない。「相手によるだろう」と、浮かんだことを正直に言うのは、なお悪い。ここは軽く受け流しておくに限る。家庭の平和のためである

 今年の「イグ・ノーベル賞」の医学賞に、キスの効用を説いた大阪のクリニック院長、木俣肇さん(62)が選ばれた

 ユーモアにあふれた独創的な研究に贈られる賞で、昨年は、バナナの皮を踏むとなぜ滑りやすいかを解明した大学教授が、物理学賞を受けている。日本人は意外なほどこの賞に強く、9年連続の受賞となる

 さて、対象となった論文の実験をみると、これは厳しい。被験者はアトピー性皮膚炎などアレルギー疾患の患者数十人。恋人や配偶者とそれぞれ個室でキスをしてもらったのだが、その時間が30分

 キスに限らず、人間本来の自然治癒力ともいうべき豊かな感情を利用すれば、症状を改善させられるそうだ。クリニックでも、ステロイド薬に頼らない治療を実践している。ホームページには、夫婦、家族の協力も大事とあった

 <君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな>藤原義孝。惜しくもなかった命だが、連れ添うようになれば一日でも長く。とまで情熱的でなくとも、仲良きことは美しきかな。効用は計り知れないようで。