「ずいぶん痩せているなあ」。先日、わが家の食卓に並べられたサンマが、である。例年なら皿の左右にはみ出している頭と尾の先が、きちんと内側に収まっている。添えられたスダチも心なしか大きく見える
その少し前、近所のスーパーの魚売り場に「新物生サンマ北海道産」の張り紙が出ていた。品定めしようとのぞき込んだが、脂ののりを示すといわれる背側の盛り上がりや、口先の黄変はあまり見られなかった
どうしたことかと思っていたら、北海道や東北でサンマ漁が振るわず、昨年と比べて漁獲量が半分になっているという記事が出た。サイズも全体的に小ぶりで、大物が乏しいとも
サンマは、北太平洋の冷たい海でプランクトンを食べて太り、夏から秋にかけて北海道の東部沖から千葉沖へ南下する。最近、資源量は減少傾向にあるといわれる
近海で捕れなくなると、遠くから冷凍して持ち帰らなければならない。技術が進んで「解凍物」もおいしいが、何といっても秋の味覚の代表格である。<これやこの旬のさんまも冷凍魚>(石塚友二)となるのは寂しい
やはり、旬の食べ物はその時季に味わいたい。サンマの水揚げ量は年ごとの差が激しいようだ。来年は皿からはみ出す大物に露地物のスダチをたっぷり搾って。<星降るや秋刀魚の脂燃えたぎる>(石橋秀野)。