<中国人はこの書の中に、人間のあらゆる典型と、出来事のパターンとが述べ尽くされていると信じてきた>。この書とは司馬遷の「史記」である
後世、歴史の表舞台に主役が現れると、必ず史記の誰それを思わせるとか、似ているとか、といったことが言われたものである-。亡くなった陳舜臣さんが書いている
歴史上の人となった彼らしか知らない。世評もさまざまある。それでも毛沢東氏にしろ周恩来氏にしろ、諸子百家を育んだ悠久の大地に連なる雰囲気を醸し出していたように思う
比べて、どうか。今の中国を見渡して、史書の偉人に比肩する人物がいるか。陳さんが「ものがたり史記」を著して30年余り。長い歴史の中では髪の毛1本ほどの時間で、随分と変わったものである。大陸を覆う拝金主義。あからさまな変質は、経済第一の改革開放路線を選択した鄧小平氏あたりから始まった
ユネスコが「南京大虐殺」の史料を世界記憶遺産に登録した。犠牲者数で論争はあるものの、決して忘れてはいけない事実である。きちんと総括できない国があり、政治利用しようとする国がある
「歴史を鑑に未来へ向かう」とかの国の人は言う。自戒を込めて思う。都合のいい事実しか映さない鏡を見詰めていても大人物は育つまい。孔孟、老荘、かつての知恵の国は、どこへ向かう。
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