昔読んだ小説にあった。<たいていの男は意気地なしね、いざとなれば>。こんな言われようは男女共同参画の今や不当だ。ならば女はどうよ、と返したいところだが、その声も、これでは少々小さめになる
プロ野球巨人、福田聡志投手(32)の野球賭博問題で、新たに笠原将生(24)、松本竜也(22)両投手も関与していたことが明らかになった。昨年の公式戦や高校野球の試合に金銭を賭けたという
そもそも、福田投手に野球賭博常習者の知人を紹介したのは笠原投手だった。昨季は1軍戦26試合に登板している。日本野球機構の調査委員会は、現時点では巨人戦は賭けの対象に含まれておらず、八百長もなかったとした。せめてもの救いと言うべきか
2人は若い。とはいえ、善悪の区別がつかないほど幼いわけではない。「普通の感覚じゃあり得ない」。ファンの腹立ちはもっともだ
賭博に限らず、誘惑は蜜の味がする。しかし事は野球なのである。憧れのプロのマウンドに立つまでにグラウンドで流した汗の量を思えば、男の意気地など持ち出すまでもない。誘惑を断ち切るのに、さほど勇気は必要なかったはずだ。疑問は消えないが、これもまた人の弱さの一つなのだろう
調査は、いまだ進行中である。これ以上、野球少年、少女たちを失望させる選手が現れないことを心から祈る。