1本のメールが形を変えつつ世界を駆け巡ったことがある。それを元に「世界がもし100人の村だったら」(マガジンハウス)という本ができたのが2001年。9月11日、米中枢同時テロが起きた年である
 
 その問いを借りて今を見る。もし100人の村だったら、13人は貧困にあえぎ、食べ物も十分ではない。でも、出版時は26人が苦しんでいたから、いまだ途上とはいえ、随分と改善されたことになる
 
 内戦や武装集団におびえていた20人はどうなったか。地域紛争は今もやまない。「イスラム国」のような過激派組織も台頭してきた。改善されたとは、とても。あすで創設から70年を迎える国連の大きな課題だ
 
 難民や気候変動、感染症対策など、他にも宿題は山積している。なのに事実上の最高意思決定機関、安全保障理事会は、欧米とロシア、中国の対立で“機能不全”に陥る局面もしばしば。シリア問題しかりである
 
 大国のエゴのはざまで、助けを待つ人が大勢いる。核保有5大国が常任理事国として拒否権を持つ現在のシステムは、もはや限界ではないか
 
 本は結ぶ。<もしもたくさんのわたし・たちが この村を愛することを知ったなら まだ間にあいます 人びとを引き裂いている非道な力から この村を救えます きっと>。そう、主張すべき時である。改革は急務だ。