東京電力福島第1原発事故を受けて四国の原発が停止し、そろそろ4年になる。「拙速」とは呼べない時間の長さともいえようが、それはやはり、この判断をどう受け止めるかによるだろう
愛媛県の中村時広知事が、四国電力伊方原発3号機の再稼働に同意した。年明け以降、再び四国に原子の灯がともることになる
安倍晋三首相から「国の責任」の言質をとったほか、四電に県独自のハードルを課した。既に運転を再開している九州電力川内原発と比べれば、判断に至る過程には慎重さも感じられる
それでも、福島原発の収束には、いまだにめどがたっていないのである。再稼働同意を「拙速」と見る人は多かろう。瀬戸内海の入り口、鉛筆のように細く長い半島の首根っこを押さえる場所にある原発が、万が一にでも大事故を起こせば、影響は計り知れない
「孫子」にいう。<戦争には拙速-まずくともすばやく切りあげる-というのはあるが、巧久-うまくて長びく-という例はまだ無い>(金谷治訳注)。「巧遅は拙速にしかず」ともいう。しかし、いずれにしても、まだましといった程度
殊に、いったん事あれば取り返しのつかない原子力防災に「拙速」はなじまない。「想定外」では済まないのである。「百戦殆(あやう)からず」の孫子なら、この状況での再稼働同意をどう見るか。
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