中国残留孤児を描いたNHKドラマ「大地の子」などの例外はあるにせよ、文化勲章の受章が決まった俳優の仲代達矢さんは、舞台や映画だからこそ映えると、ひそかに思っている

 テレビという箱-今や板というべきだが-に、あの重厚な演技は収まりきらない。「人間の條件」や「用心棒」、「椿三十郎」に「天国と地獄」。やはり映画のものである

 見る側にも、仲代さんの発するメッセージを受け止める覚悟がいるわけで、労せずしてのテレビよりも、わざわざ足を運ぶ映画館や劇場の方が、その場所としてふさわしい気がする

 何かを伝えるに際しての向き不向きはあるにせよ、昔の評論家のようにテレビが格下だなどと言うつもりは、さらさらない。ただ、草創期から走り続けている人には、心に引っ掛かるものがあるようだ。「テレビも文化の一つだと認められて本当にうれしい」。文化功労者に選ばれた、俳優で司会者の黒柳徹子さんは言う

 映画とテレビ。類推するのは、既存メディアとネットの関係である。ネットには信頼性に欠けるところがある。でも使い方がもっと洗練されれば、乗り越えられない問題ではない。ネット発の文化功労者もいずれは生まれよう

 その日まで元気でいるには何が必要か。小欄も含めて新聞業界に身を置く者は昨今、そんなことを考えている。