3カ月余り前、大阪・大丸心斎橋店の本館建て替えをめぐって「美しい内装もできる限り残してほしい」と書いた。先日、計画が発表され、内装を保存する方向となったことに胸をなで下ろした
本館が完成したのは1933年。外壁は重厚なゴシック風で、内装には幾何学模様のデザインがあふれる。百貨店建築の傑作であり、大阪の宝といえよう
計画では、外壁を残したまま、8階建てを11階建てにする。これまでの建物の内側に最新のビルが建つ格好だ。来年2月から解体工事が始まる
歴史的な名建築を完全に建て替えれば、よほどの特徴がない限り、建物として観光スポットになることは難しい。だが、歴史に磨かれた姿が少しでも残っていれば、人は訪れる
いい例が、明治末期に建てられた旧第一銀行神戸支店だろう。震災で倒壊したものの、2面の壁が保存され、市営地下鉄みなと元町駅の出入り口として使われている。国の近代化産業遺産に認定され、今や神戸の見どころの一つだ
徳島にも見応えのある近・現代建築は少なくない。三河家住宅や国際東船場113ビル(旧高原ビル)は、時を経ていぶし銀の輝きを放つ。日本を代表する建築家の安藤忠雄さんや東京都庁を設計した故丹下健三さんの作品もある。観光拠点づくりに街の宝を生かす視点は、もっとあっていい。
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