「P.S. 元気です、俊平」は徳島市出身の漫画家・柴門(さいもん)ふみさんの初期の作品。俊平と桃子、不器用な二人の恋の物語だ。1980年代前半、バブル直前の若者の気分をよく表していた

 「住人は阿波踊りの4日間以外は眠っている」。上京する俊平が後にしたのは、そんな街。テレビゲーム機もインターネットも携帯電話もない頃、「眠ったような街」の若者が集まったのが、徳島市のボウリング場「ダイヤレーン」だった

 年度末で閉店するという。とんとご無沙汰だったが、現金なもので、なくなると聞けば寂しい。他校の生徒とのスリリングな出会いなど、70~80年代を徳島市周辺で過ごしたかつての若者には、一つや二つは思い出があるのではないか

 施設は老朽化し、市内には他にも遊興施設が増えた。ボウリング場やゲームセンターだけが、若者の集う場所ではなくなった。時代は変わった

 ぼんやりと考えていたら、テレビから流れてきたジャニス・ジョプリンのような歌声に耳を奪われた。-聴こえているかい、この世の全ては大人になったら解(わか)るのかい-

 「GLIM SPANKY(グリム・スパンキー)」という日本のロックユニットだそうだ。何だかんだと言われる今の若者もきっと、気分は変わらない。退屈だけど楽しかった、あの頃の自分らと。少し安心した。