ばれれば、栄光の頂点から奈落の底に落ちると分かっていながら、禁止薬物に手を染める。そんなアスリートの汚れた夢はいつまで続くのだろうか
陸上競技には長く破られない世界記録がいくつかある。旧ソ連、旧東ドイツなど主に東欧勢が樹立した約30年も前の大記録の数々。東西冷戦期、国威発揚を狙った旧東ドイツの国ぐるみのドーピングはよく知られる
東欧勢に限らない。男子短距離のベン・ジョンソンさん(カナダ)らの大スターも禁止薬物で汚染されていた
投てき種目でも。2004年のアテネ五輪で、男子ハンマー投げの室伏広治さんは、1位のハンガリー選手のドーピング違反に伴い、金メダルに繰り上がった。東京五輪組織委理事の室伏さんは「クリーンの重要性」を強く訴えている
だが、またしてもだ。ロシアが組織的にドーピングを行っていたというショッキングなニュースを聞いて、「いつからだろうか」と思ったのは鳴潮子ばかりではあるまい。よもや、旧ソ連時代から?
名選手が打ち立てた金字塔を色眼鏡で見たくはない。それでも、セピア色の記録がグレー、やがてクロに思えてくるのは、疑惑の影がつきまとうからだ。汚れた夢には終止符を。セピア色の記録が年とともに輝きを増すよう、ロシアの疑惑を旧ソ連時代にさかのぼって徹底究明すべきだ。