またしても…。非道なテロに言葉を失った。パリ中心部と近郊の複数の場所で、ほぼ同時に銃の乱射や爆発があり、多数の犠牲者が出た。突然命を絶たれた市民の無念さはいかばかりかと、心が痛む

 犯人が狙ったのは、人々が心を癒やし、明日へのエネルギーを養う劇場やレストランなどだ。音楽や食事を楽しみ、笑顔があふれているはずの憩いの空間は、阿鼻叫喚の場と化した

 群衆に銃口を向けた犯人は、イスラム教の言葉「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫びながら引き金を引いたという。なぜ、慈悲ある神の名を口にしながら、と疑問の深いふちに沈んでしまう

 欧州や中東など地中海周辺では、今年に入ってテロが続いている。1月はパリの週刊紙本社への銃撃、6月にはチュニジアでの銃撃やクウェートでの爆発、10月はエジプトでロシア機が墜落した。いずれも、過激派組織「イスラム国」が関与したとの見方がある
 
 米国やフランス、ロシアなどの国が空爆をすればするほど、皮肉なことに、テロの脅威は深刻さを増してくる。力ずくで抑え込む戦略は、迷路の奥へと入り込んでいくようにもみえる

 暴力の応酬を、心の底から肯定する人間はいまい。だが、憎しみは人間を無慈悲な存在にする。はるか昔から繰り返されてきた悲劇。断ち切ってくれる神はいないのか。