庶民の幸せ。その一つの形を江戸川柳はこう詠んだ。<子が出来て川の字形(な)りに寝る夫婦>

 こちらは後の風景である。長屋の一角、漂ってくるのは夕げの匂いか。読み書きを学ぶ手助けにもと、父は稽古本の漢字に仮名を振った。子の成長を願いつつ。<うす本(ぼん)へとつさまの手でかなを付け>

 時が移れば人情も…といった類いの話でもあるまい。こちらの「とつさま」は、2歳の長男にたばこを吸わせたらしい。いやはや、あきれた手習いだ。暴力行為法違反の疑いで逮捕された24歳のこの父親。「遊び半分でやった」と容疑を認めている

 認めるほかないのである。ご丁寧にもフェイスブックで一部始終を公開していたのだから。とんでもない連中は江戸の昔からいたに違いないが、現代の子どもたちは幸いというべきか。虐待の動かぬ証拠を自ら世界にさらす。こんな道具を愚かな親たちが手にしているのだから

 昨年度、全国の児童相談所が対応した虐待事例は約8万9千件。対応範囲を広げたこともあって、過去最多となった。県内でも前年度の1・5倍、710件に上る。増え続ける虐待に、防止法の改正作業が進行中だ

 <俺に似よ俺に似るなと子を思ひ>(麻生路郎)。子を思うなら、上の句は「俺に似るな」に差し替えて読め。そう言いたくなる親の多さに、がくぜんとする。