選挙戦最終日の6日午後4時ごろ、徳島市のかちどき橋に飯泉嘉門氏の支持者がずらりと並んだ。手にしたのぼりには「未知の世界へ挑戦」「未知の世界へのいざない」の文字。今回の選挙戦で飯泉氏が掲げたキャッチフレーズだ。

 県庁前でマイクを握った飯泉氏は「人口減少と災害列島の二つの国難がわれわれの前に立ちはだかり、これまでの常識が通用しない未知の世界が広がっている。未知の世界の羅針盤を誰がつくるのかが問われている」と説いた。

 17日間の選挙戦では、飯泉氏に対する他候補からの批判が目立った。岸本泰治氏は演説会などで「未知へのいざないと言うが、どこに連れて行かれるのか」と皮肉り、宿泊者数や道路改良率、糖尿病死亡率など、徳島が全国ワーストとなっている課題を並べ立てた。

 飯泉氏は他候補批判をほとんどせず、人口減少や防災の取り組みなど政策の訴えに終始した。ただ、その訴えが有権者にどれだけ響いたかは未知数だ。

 徳島新聞社と共同通信社の出口調査によると、飯泉氏に投票した人のうち、投票時の判断基準として最も重視したのは「経済や景気、雇用」が30・0%と最多で、次いで「医療や福祉」の19・4%だった。一方、飯泉氏が街頭演説に時間を割いた「防災やインフラ整備」は5・0%、「過疎化対策」は3・2%にとどまった。

 岸本氏に投票した人をみると、「県政の継続か刷新か」を重視した人が24・2%で最も多い。政策論争は深まらなかったが、多選批判を中心とした岸本氏の訴えに有権者が一定の反応をしていたことが見て取れる。

 飯泉氏は当選から一夜明けた会見で、自身の訴えに関し、「分かりづらい、難しすぎるという話もあった」と明かした。その上で、「国難に直面している日本を地方創生の名の下にどう変えていくか、その処方箋を出せなければ東京一極集中の是正はあり得ない」と日本全体を見据え、あえて目の前の課題について訴えなかったと説明した。

 ただ、景気や雇用、医療、福祉といった身近な課題の改善に向けた道筋を聞きたかった有権者も少なくなかっただろう。

 また、他候補から批判された点については「ワーストを克服することも大事だが、一歩先を先取りし、いかに徳島に合ったものを見いだしていくかが求められている」と強調。県内全域で整備した無料の公衆無線LANサービスなどを念頭に「1番手だからこそ国がモデルとしてバックアップしてくれる。2番じゃだめだ。お金のない徳島は1番を引かないといけない」と先進的な取り組みに意欲を示した。

 選挙戦を通じて耳にした有権者の声をいかにこれからの県政運営に反映させるか。県政史上初の5期目の知事には、これまで以上に厳しい視線が注がれる。