トルコの詩人ジャヒット・キュレビ、「ジェベジの橋」の一節。<世界 私の美しい世界は/きびきびと働いている/人間たち 人間たち 人間たちは/なんでこんなに争いつづけるのか/私はわからない>(峯俊夫訳)

 古来、無数の人々が同じ嘆きを口にしてきた。「なんで争い続けるのか」。しかし現実にはその種は尽きず、争いはやむことがなかった。暴力を制御できるほど、人はまだ賢くなっていない

 また、新たな火の手が上がった。シリアの国境付近でトルコ軍がロシア軍機を撃墜し、両国の緊張が高まっている。オスマン帝国の時代から、幾たびも戦火を交えてきた両国である

 シリア問題でも、空爆の手法やアサド大統領の進退をめぐって真っ向から対立している。自らが支援する穏健な反体制派まで爆撃の犠牲になっているとトルコは怒り、ロシアはロシアで、過激派組織「イスラム国」の石油密輸でトルコが利益を得ていると非難する

 互いに抜き難い不信感があるにせよ、当面の敵を見誤るべきではない。国際社会の足並みが乱れれば、テロリストが喜ぶだけである。シリア和平もさらに遠のくだろう

 それにしても国連の存在感のなさはどうだ。そんなもの、と冷めた見方もできようが、暴力を制御する知恵の一つとして誕生し既に70年がたつ。なのに今なお、である。