オーストリア出身のフリッツ・ラング監督が大戦中、ハリウッドで撮った「死刑執行人もまた死す」は反ナチス映画の傑作とされる

 ドイツ占領下のチェコ。実際に起きたナチス高官暗殺事件を下敷きに、秘密警察ゲシュタポと抵抗する市民のせめぎ合いを描く。ゲシュタポは人質にした市民を次々と殺害し、犯人をあぶりだそうとするが…

 処刑が迫った大学教授は、まだ小さな息子への遺言を、暗殺犯をかくまった娘に託した。<自由は、帽子や菓子のように粗末にできんのだ。自由は戦い取るものだ。私を思い出すなら-父親としてでなく、自由のために戦った者として思い出せ>

 1980年代、韓国の市民も自由を求めて軍事政権に抵抗した歴史を持つ。それなのに今、自由をないがしろにするのはなぜか。産経新聞前ソウル支局長への懲役求刑に続き、「帝国の慰安婦」を著した朴裕河(パクユハ)教授が在宅起訴された

 一読すれば明らかだが、同書は、むしろ慰安婦側に寄り添って問題を分析した学術書である。いかに取り繕おうと、権力による言論の自由への介入にほかならない

 不愉快な意見は耳にしたくない。しかし相手が発言する権利を奪ってはならない。先進国では当然のルールのはずである。いささかも議論を許さない空気が、どれほどいびつか。また一つ、他山の石を拾った。