サナダムシや回虫の標本、寄生虫による病気の患者の写真が並ぶ展示室で、寄り添い真剣な表情でささやき合う若いカップルの姿は、新鮮で頼もしかった
寄生虫の怖さを知るのは、転ばぬ先のつえ。東京・目黒寄生虫館は専門の博物館だ。パネル展示などが、人体をむしばむ厄介者の正体を教えてくれる
一方、寄生虫からの救いの神は私たちの足元にいた。ノーベル医学生理学賞に輝いた大村智・北里大特別栄誉教授は、静岡県のゴルフ場の土壌で見つけた細菌が作る物質「エバーメクチン」から、「イベルメクチン」を共同開発した。アフリカなどの熱帯病のオンコセルカ症(河川盲目症)やリンパ系フィラリア症(象皮症)の特効薬で、年間3億人に投与され、死と失明の危機から救う
ストックホルムは今、ノーベルウイーク。記念講演で、大村さんは「人間が抱える課題の答えは全て、自然の中にあると私は常に信じてきた。微生物は無限の資源だ」と話した。「信条は茶の湯の心得とされる『一期一会』だ。どの機会も二度と訪れることはない」とも
特効薬で救われた目で、自然界に人類の課題の克服策を見つけてほしい。救いの光が希望の光を生む、そんな英知の連鎖を見たい
寄生虫館には大村さんのノーベル賞関連のパネル解説もある。憎めない寄生虫グッズも販売中だ。