道、1400キロ。香川県さぬき市の四国88カ所結願の霊場・大窪寺にはお遍路さんの汗の染みこんだ金剛杖が無数、奉納されている。自分を見つめ直す40余日。願いはかなったろうか
「歩き遍路」は心身両面に好影響を与えるとの実験結果を先日、産業技術総合研究所四国センター(高松市)がまとめた。ウオーキング以上の、遍路ならではの効用が存在するという分析は実感に近い
奉納された杖を眺めつつ思う。幸運をつかんだり、病気が治ったりと御利益もいろいろ言われるけれど、非科学的と切り捨てられない。世界を測る科学の升は存外小さい。世は分からないことだらけ
宇宙となればそれこそ「分からない」も宇宙的なスケールとなる。復活した探査機「あかつき」が金星の軌道に入り、来春から日本初の惑星探査を始める。空海が悟りを開いたとされる明けの明星。多くの知識を地球に届けてほしい
確かニュートンもこんなふうに言っていた。「遠くが見えたのは巨人の肩に乗っていたからこそ」。科学は積み重ねの上に成り立つ。今、この場所にいるのは、少しでも升を大きくしようとした先人の無数の成功と失敗があって
「分からない」に挑まずにはいられない人間のさがか…などと柄にもなく物思いにふける。これも霊場の御利益だろう。線香の煙漂う大窪寺にて。