「安」を「いずくんぞ」と読ませれば、「どうして~か」といった疑問、反語表現になる。ツバメやスズメ(小人物)に、どうして大鳥(大人物)の志が分かるというのか-。「燕雀(えんじゃく)いずくんぞ鴻鵠(こうこく)の志を知らんや」は、受験生ならおなじみ、史記の一文

 その年の世相を一字で表す「今年の漢字」に「安」が選ばれた。こちらは「どうして」どころか、極めて順当だろう。国論を二分した安全保障関連法の安である

 テロの脅威、温暖化と異常気象、TPPの荒波を乗り切ることができるだろうか。不安の安でもある。安全安心を脅かすということでは、くい打ち不正なども入れずにおかれようか

 2位の「爆」、3位の「戦」もなるほど。良くも悪くも存在感の増す中国人の「爆買い」は、新語・流行語大賞にも選出された。自爆や空爆にも爆の字が見える。原爆の惨禍から70年がたつのに、どうして世界は核の恐怖から逃れられないのか

 広がる戦火の戦、レッテル貼りといわれた戦争法案の戦。戦後70年の節目の年、大戦の遺恨が残る中韓両国との和解の好機だったがそうはならなかった。慰安婦問題もいまだ解決に至っていない

 来年は、疑問や反語で暮れぬよう。天下の民が安心して暮らせる、とにかく明るい日本にしてもらいたい。「安」で始まる安倍晋三首相へのお願いである。