当然の判決だ。だとしても、もやもやした感じは残る。政治の風が吹くと何もかもが、いかようにもなびく国なのか。そんな思いを強くした
朴槿恵(パククネ)大統領の名誉を傷つけたとして在宅起訴された産経新聞前ソウル支局長に、韓国地裁は無罪を言い渡した。日本相手となれば、司法ですら別の力学が働く事態が繰り返されてきただけに、当の前支局長も予想外の結果だという
問題となった、男女関係に絡むうわさを扱ったコラムは今もネットで読める。会心作には思えない。朝鮮半島のことわざにあるそうだ。「行く言葉良ければ返る言葉も良い」。ただ、大統領たる者どんな言葉にも冷静に対応できなくては。来る言葉が悪ければ口封じ、では。そもそも刑事訴追などあり得ない
「公職者への批判は、その地位が高ければ高いほど保障の範囲は広くなければならない」。まっとうな判決だが、政権の意向がどれだけ働いたか。公判では韓国外務省の要請文が読み上げられた。三権分立はどこへやら、司法への露骨な介入である
「李明博(イミョンバク)政権は批判報道を民事訴訟による嫌がらせで抑えようとしたが、朴政権は身体的自由の抑圧を狙ってくる」。自身も拘束された経験のある、かの地の特ダネ記者の実感
これを機会に、「来る言葉」に言論の自由をお認めになってはいかがですか、大統領。