財界では、出身企業や業界のことばかりを考え、産業や日本経済全体を俯瞰(ふかん)しない経営者らを”田舎者“と呼んだそうだ。地方育ちの田舎者の小欄も、財界のリーダーには度量の大きさと広い視野が必要だと思う
 
 第2代経団連会長の石坂泰三氏は戦後、社長として経営危機の東芝を再建。1970年の日本万国博覧会の協会会長も務め、成功に導いた。第4代会長の土光敏夫氏も再び経営難に陥った東芝を立て直し、第2次臨時行政調査会会長として行財政改革に心血を注いだ。2人とも絵になる男だった。その風貌には「世のため、人のため」の心がにじむ
 
 ところが後輩社長たるや…。無理な目標を掲げ、利益の水増しと組織ぐるみの隠蔽(いんぺい)を招いた。不正な資料で監査法人の目もすり抜ける。頭に浮かんだのは、17世紀のフランス画壇の巨匠ラ・トゥールの「いかさま師」。トランプに興じる青年を、背中にカードを隠し持った男と仲間の女たちが、だまそうとしている
 
 「女占い師」という作品では、老女の占いに気を取られる青年の周囲にいる女たちが、財布に手を伸ばし、金の鎖も切り取る
 
 不正会計は東芝の株価を下落させ、多くの株主の資産を奪い取った。名画と違い、東芝の構図には格調も何もない。再建には石坂氏や土光氏級の人材が必要だ。田舎者の老婆心かもしれないが。