海底の細長い溝状の地形をトラフと言う。大地震の源、駿河湾から日向灘沖に延びる南海トラフでは何が起きているか

 日本列島が載る陸側プレートの下に、海側からフィリピン海プレートが潜り込んでいるのである。引きずり込まれる陸側の先端に、ひずみが蓄積されていく。たゆませた板バネがはね上がるように、たまったエネルギーが100~150年周期で解放されて大地震となる

 前回の昭和南海地震が1946年12月21日。それから69年もたっているのだから、ひずみはたまる一方だ。「その日」は確実に近づいている

 海陽町鞆浦の漁港近くに、四国で最古の津波碑がある。1605年2月3日の慶長南海地震の碑である。100年後の宝永地震の碑文も同じ大岩に刻まれている

 町の説明板から引く。<後の世に言い伝えるために之(石碑)を奉じ建てる。このことを知った人々は等しく利益を受けるに違いない>。自然は過酷だ。冬至の時期だった昭和南海と同様、慶長の被災者も寒さに震えたはず

 子孫の命を守りたい、との先人の思いを無駄にするわけにはいかない。分かっているよ、という前に今いる場所で地震が起きたら、どう生き延びるか想像してみよう。襲ってくるのは津波だけか。宝永の碑文は訴える。「あらかじめ-考えよ。そうすれば逃れることは可能だ」。