やはりこの人、ゴールが似合う。そう思うのも、女子サッカーの頂点に立った2011年ワールドカップの印象が、鮮烈に残っているからだろう

 東日本大震災で傷ついた被災地に、この国に、「希望」の二文字をよみがえらせてくれた澤穂希(ほまれ)選手。現役最後の瞬間まで全力で駆け、最高のサッカー人生にもう一つ栄冠を付け加えてピッチを去った

 まだまだやれるのでは-。多くの人に惜しまれての引退である。リオデジャネイロ五輪まで、あと半年余り。豊富な経験や、勘どころを押さえたプレーが必要とされる場面は、これからもあるはずなのに

 と言えるのも、こちらが凡人だからこそか。先頭を走る人間が受ける向かい風の強さを思う。「心と体が一致して、トップレベルで戦うのがだんだん難しくなってきた」。言葉に偽りはなかろう

 サッカーに出合ったのは、小学校2年のときだという。15歳で代表入りした天才少女。女子サッカー界不遇の時代も経験した。それでもひたむきに頑張ってこられたのは「大好きだったから。その思いだけ」

 疾走の軌跡が、そのまま歴史の新しいページになる。そんな選手はそう簡単に生まれはしない。次代をがむしゃらに切り開いていく女子を育てること。それが、向かい風の本当の強さを知る「澤穂希にしかできない仕事」なのかもしれない。