<女はみんな花だから/いくつもの顔を持っている>(「顔」福中都生子)。大勢の男たちが、そんな女に癒やされ、戦った。赤い夕日が沈む荒野で、極彩色の花の咲く南の戦線で。多くは二度と故郷の土を踏めなかった
女は「慰安婦」と呼ばれた。内に悲劇を抱えていた。ある者は親に売られ、ある者はだまされて、ある者は力ずくで、その場所に連れて行かれた。日本から、朝鮮半島から、中国から
戦争だから。それで済む話ではないことは承知していたが、それでも折り合えなかった。合意にかかった70年の月日。恨み言の一つも口にできず、人知れず世を去った花も少なくはなかろう
日韓が従軍慰安婦問題の決着で合意したとの報を聞き、喉の奥に刺さった骨が1本、抜けた気がした。国交正常化50年の今年、何の成果もなく好機は過ぎていこうとしていただけに、両政府の歴史的決断に拍手を送りたいと思う
安倍晋三首相は「心からのおわびと反省」を表明した。戦争と性。その責任をうやむやにする国が多い中で、20年前のアジア女性基金の時代から、問題の解決へ地道な努力が続けられてきたことも、もっと知られていいだろう
日韓、他に取り換えようもない隣人同士である。次の50年は共に未来を語り合う間柄に。元慰安婦一人一人と誠実に向き合うことから始めたい。
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